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中国が国際社会との衝突を厭わず、強硬な行動に出る理由

1990年代初め、中国共産党は社会主義と市場経済は矛盾しないと、公式に定義した。その後、「発展こそ固い道理」とする開発主義と、共産党による一党支配がそのために安定した、国内外の環境を保証するという、改革開放路線へと進んできた。

つまり、中国外交の目的は、改革開放に貢献する、中国に有利な国際秩序を構築することである。

強かな戦略

1、歴代の指導部は、中国が既存の国際秩序に遅れて参入した新参者と認識してきたため、自国の発展に有利な国際秩序をどのように構築するか、どのように適応するかを考えてきた。自らを、不利な立場にあると理解し、注意深く、警戒心を持ち、中国語でいう「不安全感」を抱きながら、国際秩序を観察してきた。

2、世界のパワー・バランスが崩れ「100年に一度の大きな局面の変化」が起こると読んだ。この言葉は、2017年12月に、中国の外交官を集め習氏が演説を行っている。以来さまざまな会議で「最悪の事態を想定」しておくようにと指示している。今まさに、アメリカトランプ大統領の出現により、自国を守るため自らが決めた国際秩序を次々と放棄し、結果としてアメリカ社会全体が凋落の兆しさえある。そこへ、新型ウイルス禍の出現である。それが、中国の安全と発展にとって、深刻な影響を与えると読み、さまざまな状況に迅速かつ有効に対処する必要性を自国民に訴えている。19年10月開催の会議で、「最悪の事態」に備えるための政策を採択。この中に、香港国家安全維持法の立法に向けた方針が含まれていた。なんと、用意周到の戦略ではないか!単なる思い付きで行動しているのでは無いことを、われわれは肝に銘じなければならない。

考え抜かれた行動

1、中国の主要な関心は、既存の国際秩序を形作る米国の覇権がどのようにもたらされているかを、研究し尽くすこと。その結果、米国の覇権はレジーム覇権、経済覇権、政治とイデオロギー覇権、軍事覇権によって形作られていると喝破。レジーム覇権とは、「制度に埋め込まれたディスコース・パワー(下記※参照)」に近い。これら米国による覇権の構造を学び、政権に取り入れる。そして発展に有利な国際秩序の構築を目指して来たのである。

この概念は、平成15年10月に発表した「第13次5カ年計画(16年~20年)」に提起し、16年3月の全国人民大会で正式に採択している。

2、その形は、「グローバルガバナンスと国際公共財の供給に積極的に関与し、グローバル経済がガバナンスでの『制度に埋め込まれたディスコース・パワー』を高め、幅広い利益共同体を構築する」という方針である。その結果として、中国は世界銀行や国際通貨基金と言った、既存の国際制度での議題設定権や議決権の拡大を目指すものである。

加えて、「一帯一路」やアジアインフラ銀行(AIIB)といった、中国が主導して設けた国際制度の影響力を強化することであり、また既存の国際制度の改革を促すことも当然意識していた。

3、現在国連の15ある専門機関のうち、4機関トップを中国が占めている。

4、そして、深海底やサイバー、極地、宇宙などの新しい領域に関する国際制度の構築を先導することも目指している。

脅威の中国外交

1、「不安全感」の説明として、「パスク・アメリカーナ」と言われる既存の国際秩序は、①米国あるいは西側の価値観、②米国を中心とした軍事同盟、③国連とその国際組織という三つの要素で形作られていると、中国は見ている。その中で前者の二つは、中国と相いれず、受け入れることが出来るのは、3つ目の、「国連とその国際機関」だけであると認識。

2、中国国内には、「パスク・アメリカーナ」の衰退を読み取り、そこにリスクが含まれていると判断。チャンス到来と考えるのは、当然のシナリオである。ここに、中国が強硬な対外活動を選択する理由が存在する。

現在の中国指導部は、自らの外交路線を「中国の特色ある大国外交」と呼ぶ。この路線は、17年11月の第19回共産党大会で、確定している。

3、「大国」とは、「世界の平和に影響を与える決定的な力」と、習氏は言う。中国の外交路線の関心は、「パワー(力)」の拡大であり、その中でも重視してきたのが「制度に埋め込まれたディスコース・パワー」(中国語で、制度性話語権)である。

※ 「制度に埋め込まれたディスコース・パワー」

「ディスコース・パワー」とは、話し手の言説に含まれる論理、価値観が生み出す影響力。発言の内容を相手に、受け入れさせるパワー。一言でいえば、「説得力」と言える。

「制度に埋め込まれたディスコース・パワー」は、国際秩序を形作る国際制度での議題設定権や、議決に中国の要求を受け入れさせるパワーである。