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中国外交、強気の背景

最近の中国の動きは、国際社会との衝突を生む強気の対外行動をとっている。香港の国家安全維持法の施行、南シナ海への進出、尖閣諸島周辺での公船による侵入・数年前まではあった遠慮や妥協が全くなくなった。

なぜこうまで強圧姿勢を加速させているのか?それは前にも記した、自国の発展(経済・国民の安定)に有利な国際環境を構築するため、自らの主張、理念を国際秩序に埋め込む外交へと転換したためである。これが中国が主張する「大国外交」である。

即ち、国際ルール、いわゆる国際秩序を中国の覇権主義で、塗り変えること。国連の組織の運営(議案の設定権や議決権の拡大、ポストの確保)や、規範を『中国流』に変えようとする野心である。

その背景には二つの自信にある。

その一つは、中国がコロナウイルス禍で、パンでミック対応に成功したこと。これは、共産党による統治の有効性を証明した証であると。二つ目は、中国の輸出先は凋落の激しい米国より、新興国の占める割合の方が、すでに大きくなってきている。広域経済圏構想「一帯一路」も着実に、アジア、中東、アフリカへと勢力を拡大している。

中国一国だけが、武漢ウイルスのダメージから素早く抜け出し、手間どる米国を尻目に経済を立て直しつつある。経済協力開発機構(OECD)によると、主要国のうち中国だけが今年、1.8%のプラス成長が見込まれ、米国は逆に、3.8%のマイナス成長になると見られている。

こうした経済成長は、経済援助で発揮され、すでにアフリカ外交で成功を収めている。加えて軍事力の拡大は、目を見張るものがある。とりわけ国防総省の発表によると、地域覇権の決め手となる中国海軍の艦艇は、すでに約350隻を擁し、米海軍の293隻を上回っている。但し、保有する艦艇数よりも、総トン数がモノを言う。原子力空母や強襲揚陸艦の性能を見ると、米国が圧倒している。問題は、今後の造船能力にある。米海軍の新しい巡洋艦が就航したのが、なんと26年も前のことであり、それ以降新造船は就航していない。アメリカも財政不足に喘いでいる。

中国外交には、協調と強制の相反するアプローチが併存する。協調では、経済力を背景にした包摂的なアプローチで、「衛生健康共同体」という理念を掲げ、感染症対策の国際協力を展開している。

強制では、中国外交の原則や国益(中国の「物語」)を相手に受け入れさせるアプローチである。東シナ海、南シナ海の海洋秩序をめぐる中国の行動の正当性。あるいは援助国に「一つの中国」原則を受け入れさせようとする行動である。

中国がこうした強気の外交を展開する要因の締めは、国内事情にある。

冷戦構造が崩壊した1990年代初めの中国指導部は、統治を支えるイデオロギーの弱体化を克服するため、開発主義と共に、愛国主義を公式のイデオロギーに据えた。

いま高度経済成長が終わり、コロナ禍を押さえ込んで、開発主義の成果が相俟っているが、一方で強調された愛国主義が、大国主義に大きな影響を持つ。国内世論が弱腰とみる対外行動を選択するのは難しいのである。