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果して「脱中国」は可能なのか――中国発イノベーションの脅威

過去10年間、中国経済が飛躍的な成長を遂げたことは、日本経済に大きな福音をもたらした。中国が日本企業にとって最大の海外事業展開先となり、「中国頼みの日本経済」とまで言われた時もあった。

中国は、自国発生のコロナ禍をいち早く終息させ、世界に先駆けて経済を立ち直らせた。その中に、日本経済にとって重要産業である自動車産業が含まれている。中でもトヨタ自動車は、4~6月期の販売台数が約3割減にとどまり(他社は軒並み5割減)、利益も確保。7月の新車販売台数は、前年同月比19.1%増の16万5600台となり、「中国依存」を色濃くしている。

日本の貿易相手国は、中国が第1位で、企業の拠点数は3万2千余りと、米国の4倍近い断トツの多さである。

新型コロナウイルスをめぐるサプライチェーン(供給網)の混乱、一部コロナ対策に必要なマスクなどが、自国で調達できなくなった。加えて、情報流出など安全保障上の懸念、米中対立などの問題が浮き彫りになり、日本の製造業の「脱中国依存」は進んでいない。

産業界全体の潮流は、まだ中国重視だ。

日本貿易振興機構(ジェトロ)の報告書のよると、今年1~5月のおける日本企業の対中直接投資額は、59億㌦(約6200億円)と、前年並みのペースで推移。      「世界最大の市場としての中国の重要性は変わらない」とする一方、「サプライチェーンの分散化も必要」との見解も散見する。

こうしたトランプ政権とコロナ禍が、世界経済を混乱に拍車をかけたが、中国そのものはビクともしていない。むしろ、1人勝ちの様相を呈し、アメリカに代わって世界の覇権を握ろうとしている。

その背景は、中国は既存の資源を使って技術革新を起こしやすく、ほぼすべてを国内で生産できる強固な製造業をすでに築いている。しかも、国自体がイノベーションを加速できる一貫した国家的な産業政策を持っていることにある。

中でも、中国初のイノベーションが、日本で急速に普及してきた。社会の運用に欠かせない領域や小中学校の教材など、日本の技術やサービスに比べ、使いやすさや品質に優れている例が、増えてきているからだ。

ここに、いくつかの事例をもって、中国の技術に迫ってみたい。

<小学校のプログラミング教育に使うロボット>

小中学校のSTEAM教育(理数系の学問や芸術を組み合わせて課題解決力を養う教育)の教材に初歩的なプログラミングで動くロボットを使うが、そのロボットは中国製。  「メイクブロック」(中国のスタートアップ企業)は、世界140カ国・地域に納入実績を持ち、世界的な視野でロボットを開発している。

日本でもすでに、大阪市の公立小60校以上に納入実績がある。           20年度から、小学校でプログラミング教育が必須となったため、採用はさらに増えそうだ。

日中間のビジネスでは長年、先に成長した日本の企業が輸出や工場進出で中国を開拓するパターンが続いた。今や、中国の方が技術力で先行し、日本に存在しない技術・サービスを提供する提携が増えてきた。

<ニトリHが、商品検索アプリに、アリババ集団のクラウドサービスを使って開発>

人工知能(AI)で画像を解析し、ネット検索する仕組み自体は珍しくない。ニトリは、日米のIT大手の類似技術と比較し、「在庫情報との連携などで、アリババの技術が格段に優れている」と判断して採用を決めた。

スマートフォンに買いたい商品の画像データを入力すれば、どの店舗にあるかなどを瞬時に検索するシステム。顧客の他、全国で約450店の店頭に立つ従業員も、このシステムを利用し、検索回数は週に数万回に達している。

アリババが中国の膨大なネット通販で蓄積した商品管理のITを使うことで、店舗運営を効率化できた。

<住宅会社が中国スタートアップ企業との提携>

大阪市の中堅住宅会社、大倉は、19年11月あらゆるものがネットでつながる「IoT」事業を手掛ける中国のスタートアップ企業杭州塗鴉信息技術(Tuya)と提携。 大倉は、Yuyaの技術を標準装備したスマートハウスを、各地で発売する計画。

Yuyaは、白物家電などをIoT化するモジュール(複合部品)をクラウドサービスと一体で提供するビジネスを展開している。顧客は個人ではなくすべて企業。自社ブランドを持つ企業に、IoT技術を提供し、彼らの商品のスマート化を裏側から支えている。

YuyaのIoT技術は、リフォームの際に組み込みやすい柔軟性がある。Yuyaの強みは、IoTプラットフォーム(基盤)を標準化していることだ。例えば、顧客企業が自社ブランドのスマホ用アプリを開発する場合、10分間で作業が完了する。15日間あれば、量産機器に載せるモジュールの供給体制を整えられる。

以上、経済性を加味すると、日本社会が中国のイノベーションの利用で、抜き差しならぬところまで進んでおり、「チャイナフリー」を貫くのは、もはや困難だ。安全保障や政治リスクを意識しながら、是々非々で使っていくのが現実的な選択だろう。