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コロナ禍が歴史を加速

コロナ禍を機に、経済社会は大きく変わりつつある。それは過去との断絶ではなく、以前からのトレンドの早送りの面が強い。国や社会は、あわただしくその対応に追われながら、コロナ禍は歴史を変えているのではなく、加速していると感じる。

特に目を引くのが、経済・社会のデジタル化のスピードだ。外出自粛でリモートワークやオンライン学習が一気に広がった。波に乗り遅れていた日本も、たまっていたマグマが噴き出すように動き出した。

医療分野では、日本医師会が長年反対してきたオンライン診療の規制緩和が緊急対応で認められた。6年前、安倍首相自らドリルで打ち砕くと宣言しながら、いっこうに進まなかった岩盤規制の改革、コロナ禍が厚い岩盤をうがち始めた。

マネーの世界でも時計の針が進む。中国政府は、武漢市の封鎖解除から間もない4月中旬、デジタル人民元の実証実験を開始。説明会には、地元商店に交じって米スターバックスや米マクドナルドなど外資系企業も参加した。導入時期の目標には、22年の北京冬季五輪を掲げるが、前倒しもあり得るとみる。日米欧でも、デジタル通貨導入の議論が加速してきた。

コロナ禍で仕事、娯楽など多くの経済・社会活動がネット空間へ移った。高速通信規格「5G」など技術進歩と相まって、デジタル革命の歴史は不可逆的に進むだろう。

デジタル化とともに加速しているのが、米中対立に象徴される世界の分極化、分断化だ。感染初期の中国の対応や情報開示の遅れに不信を持つ米国は、世界保健機関(WHO)脱退を表明し、米中強硬姿勢を強める。中国も「戦狼外交」と呼ばれる強硬姿勢で、世界で自国のコロナ対応を擁護。米欧が批判を強める香港政策でも、譲歩する気配はない。

米中対立の狭間で、日本外交も試練を迎えている。香港の民主化阻止の問題に、日本は一言も反論していない。米国が極端な対中デカップリング(分離)政策を進めば、インバウンド(訪日外国人)、サプライチェ―ン(供給網)、消費市場で中国に依存する日本企業には、多大な影響が及ぶ。だが日本の安全保障を考えれば、米国が中国に強い姿勢で臨み、アジア地区に関与を続けることは望ましい。今後は「米国化、中国か」という踏み絵を踏まされる局面が増えることも予想される。

コロナ禍で、デジタル化と分断化が加速する世界。新たな国際秩序の均衡点を探る混沌は、しばらく続くだろう。日本にも、さまざまな難しい選択が待ち受けている。